2017年12月9日土曜日

米国のプロベイト(Probate: 検認)とは?

米国のプロベイト(Probate: 検認)とは?


2018年も師走に入り、気持ち的にも仕事的にも慌ただしい時期に突入しました。
ご依頼いただいた件でも、海外から返信が来ない件が何件かあり、やきもきしています。海外は日本より早く、ホリデーシーズンに入りますし、年末年始は、海外への配送も上手くいかないことがあります(過去にありました)。この時期に、大切な書類の発送は避けたいところです。

さて、アメリカの遺産相続では、プロベイト(Probate)という手続を求められることがあります。プロベイト(Probate)とは、いったい何でしょう?

プロベイト(Probate:検認)とは?


プロベイト(Probate)とは、英米における裁判所が関与する一連の相続手続の総称です。

日本で「検認」といえば、自筆証書遺言が遺されていたときに、裁判所で行う手続、というイメージをお持ちではないでしょうか。

しかし、アメリカの場合は、事前にトラストなどで準備をしていた場合を除き、遺言の有無に関わらず相続手続として必要となるのが、プロベイト(Probate)です。裁判所の監督のもとに行われる、遺産の清算手続です。

(※2020年7月追記:日本では、2020年7月より開始された自筆証書遺言書保管制度を利用すると、日本の裁判所での検認は不要になりました。)

なお、日本の「検認」は、遺言書の証拠保全に関する手続です。プロベイト(Probate)は、日本の相続手続の際の検認とは、全く性質が異なるものです。

プロベイト(Probate)の手続では、管轄の州裁判所の監督のもとに、故人の資産、税金や債務の支払、そして残されたものを相続人へ配分する手続を行います。
最終的に相続人等が相続するのは、債務や支払をすべて清算した後に残った財産だけとなります。

家族間の争いや債権者との争いが無く、米国国内だけで手続が完結すれば、多少時間はかかるでしょうけれど、それほど複雑な手続ではありません。

ただし、不動産等の売却が必要となるケース等で時間がかかることは大いにあり得るでしょう。遺産の額によっては、small estate という簡易な手続が適用できる場合があります。

このプロベイト(Probate)によって、亡くなった方の遺産が、遺産財団(Estate)となります、裁判所から任命された代表者が、遺言執行者(Executor)または遺産管理人(Administrator)としてEstateの清算手続きを実行していきます。

場合によっては、数年がかりとなり、かなり長い時間を要することもあります。

アメリカで亡くなる方の多くは遺言を遺していることが多いですが、もし遺言が無かった場合に指名される遺産管理人の種類には、Independent administratorとDependent administratorの2種類があります。
Dependent administrator(和訳は、非独立管理人、という感じでしょうか)となった場合は、すべてのプロセスを裁判所の管理下で行うため、非常に手間と時間がかかることになります。


アメリカの金融機関はプロベイト(Probate)書類を要求する


アメリカの金融機関は、日本でも当然にプロベイト(Probate)があるという前提で書類を求めてきます。
このように、アメリカの遺産相続において、プロベイト(Probate)を求められた場合には、日本で手続を完結することは不可能と思った方がよいでしょう。
「思ったほうがよい」という歯切れの悪い言い方をしている理由は、金融機関によっては、日本法に関する書類を整えて説得すれば、プロベイト(Probate)を免除してくださるところもあったからです。それでも、金融機関によっては、やはりプロベイト(Probate)を求めてきて膠着状態になることがあります。特に財産の額が大きくなればなるほど、厳格にプロベイト(Probate)を要求してくる印象です。アメリカのみならず、他の英米法の国でも同様の印象です。

アメリカ現地裁判所の手続きが必要となる場合には、現地の弁護士の力を借りる必要があります。アメリカの弁護士といっても、資格が無い州は対応できません。アメリカに在住の弁護士であれば、どの案件でも対応できるか、というと、そういうわけでもありません。

日本の相続とアメリカの相続の違い


日本では、民法上、遺産は、亡くなった人(被相続人)の死亡と同時に、相続人に承継されることになっています。
一方、英米法上では、遺産は、一旦、遺産管理人または遺言執行人に帰属させ、裁判所の関与の下、それらの管理人や執行人によって管理・清算されます。
そして、プラスの財産が残るときのみ、相続人へ遺産が分与されますが、手続の結果、プラスの財産が残らない時には、相続が行われません。

日本では、遺産分割の協議を行って、協議がまとまれば、通常は裁判所の関与は無いですし、そもそも、「遺産管理人」は、日本では相続人がいない場合にしか選任されません。
一方、アメリカの相続では、当然のごとく、裁判所発行の「管理人」或いは「執行者」たることを証明する書類が要求されるのですが、日本では、該当の書類が無い、という事態が発生します。

プロベイト(Probate)を回避するには


生前に、トラストなどを設定しておくと、プロベイト(Probate)を回避できる場合があります。トラストの設定により、プロベイト(Probate)を必要とせずに、遺言の代わりに死後の財産の承継ができます。

プロベイト(Probate)が求められた海外の遺産相続について相談したい


もし、海外でお亡くなりになった方の遺産相続について、プロベイト(Probate)を要求された場合には、是非ご相談ください。

海外のキーパーソン・弁護士事務所との通信代行、書類翻訳、進め方についての各種コンサルティングが可能です。個人の方、法律事務所・会計事務所等の方々から幅広くご依頼を承っております。お気軽にご相談ください。

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■ 執筆者紹介 ■

笹山千惠子(Chieko Sasayama)
- CS planning(FPオフィス) 代表
ファイナンシャル・プランニング技能士(AFP)
行政書士 (登録番号 第10091566)
個人情報保護士(2010年合格)
著作権相談員名簿(文化庁等に提出)登載
- トライスター法務事務所 行政書士笹山千惠子のページ↓
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